オープンアクセスとは?
オープンアクセスとは簡単に言うと、学術論文をインターネット上で誰でも無料でアクセスして利用できるようにした出版形態を指します。こうすることで、全世界の多くの方に学術論文を読んでもらうことができ、引用される可能性が増え、共同研究や学術の発展を促す効果が期待できます。従来は、学術論文を読むために出版社から出版される学術誌を大学や研究者の方が購入していました。しかし、90年代に学術誌の価格高騰が問題となり、学術論文の電子化が進み、オープンアクセスのビジネスモデルができました。
学術論文を無料で読めるオープンアクセスですが、引用や再利用をするには、単純に無料でアクセスできるという理解では足りません。オープンアクセス運動を支援している財団の1つであるOpen Society Instituteが中心となり、発布したBudapest Open Access Initiative(BOAI)では、下記のように宣言しています。
ピアレビューされた研究文献へのオープンアクセスとは、それらの文献が、公衆に開かれたインターネット上において無料で利用可能であり、閲覧、ダウンロード、コピー、配布、印刷、検索、論文フルテキストへのリンク、インデクシングのためのクローリング、ソフトウェアへのデータとして取り込み、その他合法的目的のための利用が、インターネット自体へのアクセスと不可分の障壁以外の、財政的、法的または技術的障壁なしに、誰にでも許可されることを意味する。複製と配布に対する唯一の制約、すなわち著作権が持つ唯一の役割は、著者に対して、その著作の同一性保持に対するコントロールと、寄与の事実への承認と引用とが正当になされる権利とを与えることであるべきである。
Budapest Open Access Initiative(BOAI)
長くてややこしいですが、簡単に言うと「広く再利用を認めますが、著者の意に反した変更・切除などをしないようにしましょう。」ということになるかと思います。
オープンアクセスの種類
オープンアクセスの種類は一般的に色で表現されます。代表的な色は下記となりますが、モデルにより他の色が用いられる場合もあります。
ゴールド(Gold OA)
著者が支払う投稿・掲載料などで運営し、無料で出版・公開する学術誌を指します。多くの場合、クリエイティブ・コモンズライセンスを採用しています。また、投稿・掲載料のことを論文処理料金(Article Processing Charge : APC)と呼びます。
グリーン(Green OA)
研究者の所属機関や、国が運営する研究助成機関、または個人で学術論文を保存・公開することを指します。読者が無料であることはもちろんですが、著者の投稿・掲載料も無料です。しかし、掲載された学術論文は出版社が著作権を保持していることが多く、Green OAによる公開に条件を付けている場合があります。
オープンアクセスの動向
2000年代から普及し始めたオープンアクセスですが、その動向について、国立情報学研究所・SPARC Japanによる調査報告が2014年に公開されているので、少し古い情報ですが一部を抜粋して紹介します。
図1はオープンアクセス学術誌とその論文を掲載するウェブサイトのDOAJ(Directory of Open Access Journals)に掲載されている英文学術誌で、且つ、Scopusに採択されている学術誌の本数を2004年~2013年にわたり調査した結果です。右肩上がりでオープンアクセスの学術誌が増えていることがわかります。
表1はScopusに採択されている論文数のうち、オープンアクセスの論文数とその割合を示しています。こちらもオープンアクセスの論文の割合が増えていることがわかります。
2010年 | 2011年 | 2012年 | |
総論文数 | 1,489,753 | 1,598,475 | 1,657,210 |
オープンアクセスの論文数 | 68,892 | 91,781 | 114,079 |
オープンアクセスの割合 | 4.62% | 5.74% | 6.88% |
図1から、2013年にオープンアクセス学術誌の本数は857本であることがわかります。表3ではその2013年の学術誌の学術分野別の割合を示しています。医学と生物学の学術誌で、オープンアクセスが普及していることがわかります。
まとめ
今回はオープンアクセスについて、調べてみました。文字面から意味を推測できる言葉ですが、正しく理解していないと、誤った使い方をしてしまう可能性があるので、気をつける必要がありそうです。また、すでにビジネスモデルとして確立していて、増加傾向があることがわかりました。
オープンアクセスが出始めた頃は、出版社と大学などの研究機関で対立があったようです。出版社側としてはこれまで有料で販売していた学術誌を無料にするわけなので、反発があるのは当然かと思います。しかし、オープンアクセスにすることで、異なる研究分野の学術論文を気軽に閲覧できたり、金銭的な理由で学術誌を購読できない方にも広く学術論文を普及することができ、学術の発展が期待できます。私は研究者ではありませんので、高価な学術誌を購入することはためらってしまいますが、オープンアクセスなら学術論文を読んでみようと思います。オープンアクセスにより、学術が発展しその成果を社会に還元できることを願っております。